Last updated: 2020/12/19

あやとりトピックス 151-160

十二支のあやとり -9 2010/01/01

明けましておめでとうございます。

恒例の十二支あやとりのご紹介:トラの生息地は、インド、中国西南部、インドシナ半島、インドネシア・スマトラ島、ロシア沿海州など。この地域のあやとり調査記録が少ないこともあり、「トラ」のあやとりは中国雲南省大理で採集された「ニワトリの脚とトラ」(右図) だけのようです。

しかし、このあやとりの完成形は、「二ワトりの脚」だけを表しています (同じ形のパターンは、世界各地にあります → 「二本ぼうき」)。ではなぜ名称に「トラ」が入っているのでしょうか?

大理の市場のおばあさんは、このあやとりを二人で作りました。二人で向かい合い、はじめに一人の手の親指と小指に掛けた輪の糸を、もう一人が人差指と小指にからめるようにして取り上げ「二ワトりの脚」を作ります (右写真(*1))。次に、糸を取られた人が、その「ニワトリの脚」の真中の2本の糸を、同じようにして取り上げ、また「二ワトりの脚」を作ります。このようにして、二人で、延々と「ニワトリの脚」を取り合い続けます(*2)。ここからは推測なのですが、もう一人が「ニワトリの脚」のパターンを取り上げる行為が「ニワトリに襲いかかるトラ」なのではないでしょうか。トラに捕まったと思ったら、ニワトリは、その人の手の内にある。このような「トラから逃げ続けるニワトリ」を表現したあやとり遊びのように思われるのです。採集者は、言葉の壁もあり、確証を得ることはできなかったようです。このあやとりが採集されたのは、1997年。おそらく今でも大理地方では伝承されているでしょう。もし、このあやとりについてご存知の方がおられれば、ご教示をよろしくお願いします。

これでは少し物足らないので、トラと同じヒョウ属まで広げて探してみました。南米には、ジャガー (アメリカン・タイガー) を表したあやとりがあります。「ジャガーの口」は、ジャガーが大きく口を開け鋭い歯を見せている形が現われます(*3)。ジャガーのピンと立った耳、細面の精悍な顔が表現された「ジャガーの顔」や、迫力のある「ジャガーの足跡」も記録に残されています(*4)。いずれも、アルゼンチン北部、トバ (Toba) の人々の伝承あやとりです。

「ジャガーの口」
「ジャガーの顔」
「ジャガーの足跡」

アフリカには、ヒョウやライオンのあやとりがあります。1910年代、ベルギー領コンゴ (現コンゴ民主共和国) のンゴンベ (Ngombe) の人々が伝えていた、口を大きく開いた「ヒョウの口」(*5)。また、1900年代、ポルトガル領東アフリカ (現ジンバブウェ、モザンビーク) の少年からは「戦うライオン」が採集されています(*6)。単純な糸の走りが、向かい合う二頭のライオンを表わしています。糸をあやつることで、ライオンが近寄ったり遠ざかったりして、吼えて威嚇しているように見えます。

「ヒョウの口」
「戦うライオン」

最後に、ネコ科まで広げると、カナダ極北地方の「ヤマネコ」などもありますが、ここでは、日本伝承の「ネコ」で締めましょう (左図(*7))。大きな目で、耳を立て、ひげがピンと張っているように見えるでしょうか。このあやとりを黒と黄色のストライプ模様のあやとり紐で作れば「トラ」に見えるかもしれませんね。

ISFA設立者の野口廣が主催する「あやとり会」も4年目を迎えました。子どもから高齢者まで、初心者から達人まで幅広い受講者の皆さんの要望に応えるべく、初級・中級・上級のクラスに分かれた指導を始めました。また、5月には、あやとり検定の実施も考えています。興味のある方は、どうぞご参加下さい (イベント情報はこちら)。

今年も、あやとりについての情報提供など皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。

(*1)世界あやとり紀行—精霊の遊戯—』INAX出版、2006
(*2) Wirt, W. (1998) "String Figures from China and Tibet" BISFA 5:126-149
(*3) String Figure Magazine - Volume 4, number 2 (1999)
(*4) Ryden, S. (1934) "South American String Figures" GOTHIA (Meddelanden fran Geografiska Foreningen i Goteborg) 6:1-43. No instructions
(*5) Smith, C.C.K. (1997) "String Figures from the Congo" BISFA 4:135-184. pp.152
(*6) Haddon, A. C. (1906) "String Figures from South Africa" Journal of the Royal Anthropological Institute 36:142-149
(*7) Shishido Y. and H. Noguchi (2008) 「第2回十月あやとり会」テキスト
TS & Ys

法然院「遊びの寺子屋」の報告 2009/08/30

今年の京都は、7月下旬には梅雨が明け、盆地ならではの暑い夏を迎えました。7月26日から今年で第7回目の法然院「遊びの寺子屋」が善気山の麓、哲学の道を少し上がったところにある法然院で29日まで、4日間の日程で行われました。

「遊びの寺子屋」です。お寺でのんびりゆったり、みんなで遊ぼう・・子どもも大人も一つになって広くて涼しいお寺のお部屋や講堂で折り紙やお琴、お花やカプラ、さおり織りや土笛つくり、竹笛つくりや宝石さがし、さらにはお話聞かせやコンサートに餃子つくりにお寺の探検、そして、もちろん「あやとり」もありますよ。

「あやとり」が企画の一つに加わって、今年で3年目、今年は何か違うぞ!の4日間でした。何が違うって、参加者の興味と関心の度合いです。南書院という広い畳の間の一角に、開場と同時に、多いときは10名前後、少ないときでも3、4名の子どもや大人が輪になってすわります。そして、熱心に楽しそうに指を繰り返し動かします。時に海外からのお客さんも加わってあやとりの輪が広がります。それは充実感のある4日間でした。

まずは、「ほうき」から始まって、「コーヒーカップ (さかづき)」・「月にむらくも」・「カニ→納豆→女の子」、「山の上のお月様」、さらに、一連の「はしご」、一段から順に8段まで。まだまだ続きます・・「日本のカメ→ゴム→飛行機」、国際色豊かに、「パプア・ニューギニアのカメ」・「カモメ」・「ナバホの敷物」、難しいところでは、「耳の大きな犬」・「おまもり」などなど・・。

特に順番を決めることもなく、参加者の興味や経験に合わせて時にマンツーマンで、時にみんなで一緒に盛り上がりました。あやとりの本を見ながら研究する親子、年上の子が年下の子に教える、またはその逆、お互いに教え合う、こちらもやる気モリモリ!中には幼稚園の先生が参加されて、とりわけ一生懸命練習です。

今年は遠方からの方も目立ちました。藤沢からの親子3人、東京・東久留米から参加もありました。午後1時から4時までの3時間はほんとにつかの間でした。あとに心地よい疲れが残りました。さて、来年は・・どんなあやとりの輪が広がるか楽しみです。以上、報告です。

青木萬里子@ISFA 2009/08/28

『ザ・ベストハウス123』の放送内容の訂正のお知らせ 2009/03/25

平成21年2月4日、フジテレビ系列『ザ・ベストハウス123』で「世界のあやとりBEST3」が放映されました。

第1位 パプア・ニューギニアの「天の川」、第2位 カナダのコッパー・イヌイットの「耳の大きな犬」、第3位 南米パタゴニア地方の先住民マプチェ族の「火山」はいずれもベスト3にふさわしく、あやとりの素晴らしさを十分に伝えうるものと思います。

しかし、残念ながらその説明の一部に事実に反する表現がありました。

まず「あやとり」は、文字のない時代に、「その民族の知識や経験を子孫に代々伝えるための道具」であり、そのことを繰返し説明いたしておりましたのに、第1位「天の川」では、これと異なり「他の民族に季節を伝えるものであって、部族間のコミュニケーションをとることによって情報を共有し、平和を保つ手段」であったと強調されておりました。

また第3位「火山」では、事実でないのに、「宗教儀式にも使われた」とされました。

当方が誤りを指摘して訂正を求めたのに対して、フジテレビは放映内容に一部取材内容から飛躍した箇所があったことを認め、誤解を生じさせる表現をしたことを謝罪いたしました。

以上の経過により、フジテレビの了承のもとに、本訂正記事を掲載する次第です。

野口廣@国際あやとり協会顧問

十二支のあやとり -8 2009/01/01

明けましておめでとうございます。

恒例の十二支あやとりのご紹介:「牛」のあやとりで面白いのは、在ドイツのISFA会員 A.ライヒェルトさんの創作「アルプスの牛」シリーズ(*1)。「カウベル」—「牛の頭」—「クローバー」と変化するパターンは、ドイツ南部のアルプス地方の牧草地に放し飼いされている牛がイメージされています。「カウベル」は、牛の首に掛けられた鐘の舌 (clapper) が左右に振れて鳴る様子を表しています。このパターンは日本伝承の「はたおり」とよく似ていますが、後に続く「牛の頭」から「クローバー」への変化には独創的な面白味があります。取り方のページは こちら

「アルプスの牛」by A. Reichert
「バッファロー」by E. Sterch

もう一つは、アメリカ大平原の「バッファロー (アメリカ野牛、バイソン) (*2)」。アメリカの会員の E.スターチさんは、長年にわたり、あやとり語り部 (ストーリーテーラー) としての活動を続けています。ネイティブ・アメリカンの社会では、昔から、あやとりにさまざまなストーリー (神話・伝説から子供向けの教訓話まで幅広いジャンルの物語) をリンクさせて次世代へ伝えていました。スターチさんも子どもの頃に、ネイティブ・アメリカン・チョクトーの血を引く祖母からストーリーを伴うあやとりを数多く教わりました。その経験を生かし、世界各地のあやとりに話を付けて聴衆を楽しませています。この「バッファロー」は、平原地方のネイティブ・アメリカンにとって最も大切な動物として語られています。ただし、このパターンが祖母から習った伝承あやとりなのか彼の創作かは明らかにはしていません。直線の三角形の組み合わせだけで表した大きなバッファローには野性味があります。これは、先の「アルプスの牛」の牛の顔が曲線で穏やかな感じを与えているのと対照的といえましょう。

ISFA設立者の野口廣が主宰する「あやとり会」も3年目を迎えました。子どもから大人まで幅広い年代が集まる和やかな雰囲気の講習会となっています。先の見通しが困難な時代ではありますが、「あやとり」が多少なりとも皆さんの癒しや気晴らしになればと願い、今年も年3回の開催を予定しています。興味のある方は、どうぞご参加下さい (イベント情報はこちら)。

今年も、あやとりについての情報提供など皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。

(*1) Alex Reichert (2001) "Alpine Cow Series", SFM (September 2001): 8-11
(*2) Edd Sterch [Wakahana](1997) "String Stories - My Story: An autobiographical account of string figures in my life and the stories that accompany them", BISFA 4: 17-29
TS & Ys

アウディのTV-CM (自動車会社のロゴ -2) 2008/02/03

あやとりメーリングリスト (#1709,Jan 30,2008) で、アウディのTV-CMが話題なっています。これは、スペインで放映されているCMの話ですが、ユーチューブで見ることができます (→ 画面中のスタートボタンをクリック)。

最初は、白衣を来た研究者が、あやとりの四段ばしこを作り上げます。何の宣伝が始まるのだろうという感じです。それが、数人となり・・・。簡単なあやとりパターンから始まり、組み合わさって、車のパーツやさらには、車全体を作り上げていきます。そして、最後に出来上がると、一気に紐がゆるみ、さらに一瞬にして紐は消え、車となります。なんとまあ、惜しげもない贅沢な演出でしょうか。あやとりパフォーマンスというよりは、ループ・パフォーマンス、さらには、ストリング・パフォーマンスというべきものでしょう。これらは、本当に紐なのでしょうか (それともCG作品でしょうか)。いずれにしても、流れるようにスムーズに車が出来上がっていきます。振り付けもすばらしく、演者もあやとりの達人のようにふるまっています。同じあやとりをイメージしても、日本のCMとはスケールが違います。

〔追記 2011/08/09

このアウディのTV-CM製作にアドバイザーとして参加したISFA会員、P.ノーブルさんのサイトで、CMのメーキング映像と本編のビデオを公開しています (→ こちらこのサイトは存在していません)。

ところで、冒頭の「四段ばしこ」の形は、4つの輪が重なり合うアウディのマーク (右) を意識していたのかもしれません。以前、自動車会社のマークをあやとりで作りました (トピックス 147)。ここで、この「アウディのマーク」の作り方を紹介しましょう。

01
02
03
04

「五輪のマーク」の第一段階の操作を4回繰り返し、こぶし大の大きめの輪を4つ作ります (01:輪が一つ;02:輪が二つ)。これは、よく分かるようにずらして見せています。作っていく途中では、作った順序に、少しずつずらして持っています。同様にして4つの輪を作ったところです (03)。パターン下側の左右に伸びるまっすぐの糸が上になるように逆さまにします (04)。4つの輪を平たくして一緒に持ち、形はまん丸に大きさを整えます。順序を間違えないよう少しずつずらしていきます。上の糸をぴんと張って揺すりながら整え、ゆっくり離していきます。下の糸は、ゆるくゆっくりと引きますとできあがりです (05)。

05
TS

十二支のあやとり -7 2008/01/01

明けましておめでとうございます。

恒例の十二支あやとりのご紹介:ロシア極北圏チュコト半島に暮らす人々が伝えていた「丸太の上のネズミ」。左右に現れた2匹のネズミが、丸太の上にピョンと飛び乗ります。南太平洋のプカプカ島 (クック諸島) の「棟木の上のネズミ」は、屋根の上をサッと走るネズミを表しています。日本でもよく知られている指抜きトリックも、トレス海峡諸島では「ネズミ」と呼ばれ、猫に気づいて素早く逃げるネズミに見立てられています。

このように、ネズミが〈身近な生き物〉である環境世界に暮らす人々の伝承あやとりでは、〈ネズミ=すばやい動き〉として表現されています。一方、ネズミをほとんど見かけることのない現代電脳世界の子供たちの「ネズミ」のイメージは、やはりアニメ的な、このナイジェリアのあやとり「ネズミの顔」のようになるのでしょう。ほかに、創作の「ネズミ」もあります。

「世界あやとり紀行 —精霊の遊戯— 展」(INAXギャラリー巡回展) は、昨年8月好評のうちに終了しました。おかげさまで、当協会へもテレビ・新聞などのメディアからの取材申し込みを数多くいただきました。残念ながら、人材不足のためにすべての依頼にはお応えすることができないのが現状であります。ISFA創設者である野口廣は、あやとり愛好家を増やし、その中から専門的なインストラクターが育つことを願って、定期的な講習会を開いています。あやとりに興味のある方は、どうぞご参加ください。

今年も、あやとりについての情報提供など皆さまのご支援を、よろしくお願いいたします。

TS & Ys

MMPのあやとり展示@みんぱく 2007/10/19

「指で語る オセアニアあやとりの世界」展示とあやとり教室 (国立民族学博物館・みんぱくミュージアムパートナーズ) のご案内です。

9月13日(木) から12月11日 (火) まで吹田市の国立民族学博物館において、開館30周年記念特別展「オセアニア大航海展 — ヴァカモアナ、海の人類大移動 —」が開催されています。「オセアニア大航海展」は、オセアニアの海を渡った人類の壮大なドラマを航海カヌーや美術工芸品・考古資料で紹介し、その航海術や知られざる歴史に迫まる展覧会です。2階では現在のオセアニアの多様な暮らしぶりを展示で紹介しています。ラバヌイのカイカイ (あやとり) を演じる少女のビデオを見ることもできます。

「指で語る オセアニアあやとりの世界」

みんぱくミュージアムパートナーズ (MMP) によるあやとり展示は、特別展示場の2階ワークショップセクションで行われています。あまり知られていないオセアニアのあやとりを楽しんでもらおうと地図上にオセアニアのあやとりを展示し、ビデオでもあやとりの取り方を紹介しています。初心者にもできる簡単なものを中心に日本のあやとりと同じもの、オセアニアらしい美しいあやとりを選びました。あやとりは日本だけのものと思っている方も多く、来館者に喜んでいただいています。毎日ではありませんが、会場ではMMPが来館者とあやとりを楽しもうとお待ちしています。

取り上げたあやとりは15点:トレス海峡のトカゲ (トレス海峡諸島)、なげやり (トレス海峡諸島)、鮭の網 (カロリン諸島)、ねむりん坊 (ハワイ)、やす (ニューギニア)、アウトリガーカヌー (ニューカレドニア)、コウモリ (バヌアツ)、バゴボのダイヤモンド (フィリピン)、 (ハワイ)、9つのダイヤモンド (ハワイ)、かめ (パプア・ニューギニア)、ライアの花 (バヌアツ)、モア島 (トレス海峡諸島)、塩の家 (ハワイ)、井戸とかこい (ローヤルティ諸島)。

あやとり教室「一緒に楽しもう。オセアニアあやとりの世界」
開催日:11月4日 (日) ・11月18日 (日) ・12月2日 (日)
時間:*1回目12時~12時30分*2回目13時30分~14時
場所:国立民族学博物館特別展会場2Fのワークショップセクション
参加費:無料特別展「オセアニア大航海展」への入場料が必要です
各回とも先着10名。初心者向けの内容です。当日は「オセアニア大すごろく」など楽しい企画もあります。参加申し込みは、MMPへ。

MMP (みんぱくミュージアムパートナーズ) は国立民族学博物館で来館者と共に学び楽しもうと色々な活動をしているボランティアグループです。MMPの活動の情報はみんぱくHPでご覧いただけます (→ こちら)。なお、あやとり展示の様子はブログ「MMPかわら版」で紹介しています (→ こちら)。

以上は、MMPのKさんからの情報でした。

TS

“UNIQLOCK” の「あやとり」映像 2007/10/04

秋冬物衣料の発売にあわせて10月1日から、ユニクロのティザーサイト “UNIQLOCK” が、新しいヴァージョンになりました。今回は、時刻表示画面と交互に現れる女子高生4人のダンスシーンの間に「あやとり」をしているシーンが挿まれています。

あやとり指導は、ISFA会員 野口ともさん。最初の打ち合わせの時、制作監督氏は、野口先生の最初のあやとり本 (『あやとり』河出書房新社、1973) を持っていたとか。「撮影には2日かかりました (といってもダンスの合間の撮影でしたが)。紐のことや、あやとりが顔にかからないように等、いろいろ工夫をしたつもりですが、練習時間が短時間の割にはお嬢さん方も良くやってくれたと思っています」とは、野口ともさんからのご報告。たしかに、「あやとり」シーンは効果的なアクセントとなっています。

この画面、ついつい後を引いて見入ってしまいます。ティザーサイトとは、新製品の断片的な情報のみを公開し、視聴者の興味を引くことを目的に制作されたウェブサイトのことですが、すっかりその術中にはまってしまったようです。「時の経つのも忘れて」と言いたいところですが、時刻表示画面が間に割って入るわけで...。

さて、あやとり映像のパターンは何通りあるのでしょうか?Nさんからお嬢さん方に教えたあやとりの種類は聞いているのですが、それは見てのお楽しみということで。

Ys

〔追記 2007/10/08

通常バージョン (ダンス・モード) は、5秒間という短い時間で、きびきびとしたスピーディなダンスが披露されています。その合い間に、あやとりパターンが完成される局面を見せています。タートルネックのカシミアニットにあやとりが非常に似合っています。

午前0時からは深夜バージョン (スリープモード) になります。そこでも、あやとりシーンは流されていますが、出来上がりを見せるシーンはほとんどなく、あやとり紐をもてあそぶ感じのシーンが多いようです。

なお、毎正時バージョンでは、30秒間の趣の異なるダンスユニット「無名の心 (ウーミンの心)」によるコミカルなダンス (マリオネット風・ロボット風) が披露されていますが、あやとりは登場しないようです。

TS

〔追記2 2008/04/07

「UNIQLOCK」が、「第6回東京インタラクティブ・アド・アワード」のグランプリを受賞しました (3/31 → こちら)。下は時刻表示画面のないバージョンです。

Ys

〔追記3 2008/12/04

「UNIQLOCK」が、カンヌ国際広告祭 (2008/06/19) サイバー部門およびチタニウムインテグレーテッド部門でグランプリを受賞。《Projector》のサイトでCM映像が公開されています (→ こちら)。あやとりが見られるのは「SEASON 2」。

また、『広告批評』にはCM制作者のインタビューが掲載されています (2008.6+7, No.327:pp.46-51;2008.11, No.331:pp.74-85)。ただし、あやとりについての話はありません。

TS

『日経マガジン』あやとり特集記事 2007/10/01

昨年12月から今年の8月まで、東京・大阪・名古屋のINAXギャラリーで「世界あやとり紀行—精霊の遊戯—」展が開催されました。ご来場者の感想 (芳名帖記載) やブログ記事からは、多くの方々が〈あやとりは日本固有の子どもの遊びではない〉という事実を知って驚かれたことがわかります。それだけにとどまらず、子どものころ親しんでいたあの「あやとり」に想像もしなかった奥深い世界が広がっていたことに感銘を受けた方も少なくないようです。

さて、そのINAX展に触発された日本経済新聞社のH氏が企画されたあやとり特集記事「神秘の紐 あやとりがつなぐ世界」が、9月16日発行の『The Nikkei Magazine (日経マガジン)』に掲載されています (表紙・11~15頁)。日経海外支局員が取材した世界各地での伝承あやとりの現状レポートや写真は素晴らしく、中でも、N記者による、アラスカ先住民ユッピク (ユピック、ユッピック:英語表記は Yup'ik) やISFA会員D.タイテスさんらを取材した記事は出色の出来映えとなっています。この特集記事は、INAXあやとり展の関連出版物であるINAXブックレットの続編として読むことができましょう。あやとりの奥深い世界に興味のある方に一読をお勧めします(*1)

ところで、そのN記者の記事中に「中世の欧州では…禁止された」と記述されていますが、これは歴史的事実として証明されているわけではありません。この情報の出所は、1988年、日本あやとり協会時代の英文会報に、在ドイツのISFA会員P氏が発表した推論にあります(*2)。P氏は、中東やヨーロッパ地方など一神教世界に伝承あやとりがほとんど存在しないことの説明として、この推論 (教会による禁止) を持ち出したのですが、それを実証する文献類は示されず、説得力のない思いつきのレベルにとどまっています。N記者の取材を受けたISFAのリーダー、M.シャーマンが記者の好奇心旺盛でコスモポリタンな性格を気に入って、ついリップサービスしてしまったというのがことの真相であります。くり返しますが、〈中世欧州で教会があやとりを禁止した〉は、現時点では、一個人の根拠無き推論に過ぎず、史実として確認されていません。たいへん俗受けしやすい話であり、このまま流布する可能性がありますが、賢明なる日経マガジン読者の皆さまには、この俗説をこれ以上広めないようにお願いいたします。

(*1) 『日経マガジン』は首都圏の日経新聞定期購読者に月一回配布される小冊子です。バックナンバーは《日経テレコン21》からPDFファイル形式でダウンロード可能 (有料)。現在はダウンロードできません。
(*2) F. R. Mindt-Paturi (1988) "String figures and Monotheism." Bulletin of SFA 15.
Ys & TS

日本舞踊 「あやとり」 2007/09/23

9月2日 (日) 東京芸術劇場中ホールで、『目白三人の会「三つのダンスの会」舞踊への招待』が開催されました。豊島区目白に拠点をおく国際的な3人の舞踊家 (芙ニ三枝子、花柳千代、小林紀子) が結成した「目白三人の会」の発表会です → (財) としま未来文化財団。その日の花柳千代舞踊研究所の演目に、日本舞踊「あやとり」がありました。会場でご覧になったISFA会員 大槻綾子さんからの報告を紹介します(スケッチは全て大槻さんが書かれたものです):

「あやとり 日本舞踊」、先日、池袋芸術劇場にて見学鑑賞させて頂きました。あやとりは、元来一人又は二人が子供らしくこぢんまりと遊ぶものと思っておりました。それが、日本舞踊にとり入れられて20メートルもある舞台の中央部1/3も使って、どの観客にも充分にわかる表現は見事でした。次々に進んでゆく舞に私はメモ用紙にスケッチ、通常よく見る形のもの 書き留めることができました。四隅を四人が持ち、二人が糸とりをして、約5メートルの大きな「あやとり」が舞台一杯に現れます。

四番目のあや (上図右) では、六人がそれぞれあやとり紐をこの形にした先端を手に、グルグル廻ったおどりを披露しました。 六人の踊り手は20才前後、中堅のお弟子さん方でしょうか、髪をキリリと結いあげはなやかな朱鷺色 (鴇色)、白斜めに裾模様を染めぬき、涼しくて華やかでした (右図)。きびきび糸取りをして、さッと止まっては、観客に「はい」といった調子で一瞬お目にかけ、次に進むといった格好でした。音楽は三味線だったでしょうか。何か日本の民謡か童謡が聞こえていたような気がしました。中央部背景に六曲一隻の銀屏風のシンプルな配置は、あやとりの表現にとても効果的でした。あやとり紐は5センチ幅の濃い目の水色形が出来上がるたび観客にお目にかけ、新しさと懐かしさが一緒になって、「あやとりと日本舞踊」は、とてもおもしろい組み合わせと思いました。楽しい夕べでした。

9/19 大槻綾子

これまでにも、プラトン立体など幾何学模様を作り出す集団パフォーマンスのあやとりダンス (トピックス 001);古典バレエ作品の新演出としてのあやとり場面 (トピックス 120);1974年のあやとり特番 (NHKTV) で演じられた、オーストラリア・アボリジニのあやとりを作り上げる10人の集団バレエ風ダンス (トピックス 138);また、リボンをつなぎ合わせてのあやとり模様の連想から命名されたと思われる新体操の「あやとり」(トピックス 003) を紹介しています。これらの「あやとり」は、いずれもモダンなダンスとして演じられています。日本舞踊としての「あやとり」は、世界でも初めて試みかもしれません。次の機会にはぜひ拝見したいものです。

TS