Last updated: 2020/12/19

植物のあやとり

ここでは、植物のあやとりを紹介しています。

「ジャングルの木」

ガイアナ

真っ直ぐに伸びる幹をはさんで、上が枝、下が根を表している。 取り方は "String Figure Magazine" Volume 7, number 4 (December 2002) にあります。(ISFA会員のみが取り方を閲覧できます)

初出 Lutz, F.E. (1912) "String Figures from the Patomana Indians of British Guiana" Anthropological Papers of the American Museum of Natural History 12(1):1-14
Ys 2004/02/21
トピックス 088 で詳しく解説されています。

「菊」

日本

さいとうたま あやとりコレクション》 「さかずき/まくら → ちょう」から作ります。関東一円でよく知られていました。

Ys 2006/07/28

取り方:

「あさがお」

日本ほか

さいとうたま あやとりコレクション》 さいとうさんも少女時代 “両手を寄せては花が「しぼんだ」、広げて「開いた」といって遊んだものだ” そうです — 山形・山辺。同じ村の中でも、年長の人たち (1920年代生まれ) の呼び名は「馬の口」。荷運びなどをさせる馬に付ける、縄で編んだ籠状の口覆いのことです。

他にも、「灯台アヤ」(福島・伊達)、「ラッパ」(栃木・宇都宮、長野・清内路)。花の名前としては「百合」もあります (三重・美杉、東京)。

新潟・佐渡だけで聞かれた名称は「そらかご、かご」。ややいびつなロート状の籠で 堆肥を運ぶために使います。背中に合うように生木をたわめて骨格を作り、それに縄を細かく巡らせて横のふせぎにしてある背負い籠です。

取り方:『あやとりいととり 2』(pp.6~7 あさがお)


このあやとりは日本だけで伝承されてきたのではありません。

ネパールのタンセン、ポカラでは「Doko」。中に赤ん坊を入れて運ぶ背負い籠のことです (Titus, 1998)。雲南省・麗江 (会報表紙写真) やチベットのラサでは「角笛/ラッパ」(Wirt, 1998)。

北アメリカ大陸では、アラスカに「かご状の網」があります (Jenness, 1924)。また、ニューメキシコ州に暮すプエブロやズニの人々は、口でくわえる代りにもう一人が指で持ち上げ、そのパターンを「小屋」、「藪の家」と呼んでいます (Jayne, 1906)。南アメリカ大陸、チリのパタゴニア地方のマプーチェ (アラウカーノ) の人々の名称は「家畜の首にぶら上げる鈴」(Martinez-Crovetto, 1970)。

Titus, D. (1998) "String Figures from Central Nepal" Bulletin of the ISFA 5 : pp.120-125.
Wirt, W. (1998) "String Figures from China and Tibet" Bulletin of the ISFA 5 : pp.126-149.
Jenness, D. (1924) "Eskimo String Figures" Report of the Canadian Arctic Expedition (1913-18), Vol. 13, part B.
Jayne, C.F. (1962) String Figures and How to Make Them. New York: Dover. - A reprint of the 1906 edition.
Martinez-Crovetto, R. (1970) "Juegos de Hilo de los Aborigenes del Norte de Patagonia" Etnobiologica 14.
Ys 2006/07/28

取り方: 朝顔

「テリハボクの花」

ナウル

19世紀末にリン鉱石の発掘が始まる以前、ナウル島の中央台地はテリハボク (Calophyllum inophyllum) がうっそうと茂っていたそうです。材は建築やカヌーに、種子油は薬や灯明などに用いられました。島の人々の暮らしとともにあったこの植物、今はナウルの ‘国の木’ に指定されています。

6~7月頃、小さな花がたくさん集まって咲き、芳しい香りを漂わせます。このパターン、真中のダイヤはめしべ・おしべ、両側は花弁でしょうか。

このあやとりを取る時は、「i bur in ijo, me eman in ijo テリハボクのつぼみ、テリハボクの葉っぱ」とくり返し唄います。そして最後に、パッと花が開くようにパターンを広げます。

詳しい解説と取り方:"String Figure Magazine" Volume 9, number 3 (September 2004) (ISFA会員のみが取り方を閲覧できます)

初出 Maude, H.C. (1971) "The String Figures of Nauru Island" Libraries Board of South Australia Occasional Papers in Asian & Pacific Studies 2:pp.2
Ys 2005/02/27

取り方: テリハボクの花

「ライアの花」

バヌアツ

みごとな六弁の筒状の花が現れます。1923年、ニューヘブリジーズ諸島 (現バヌアツ共和国) から報告されています。

初出 Ball, W.W.R. (1971) Fun with String Figures. New York: Dover.
Ys 2005/10/05

取り方: ライアの花

「ナイオの木」

「‘赤い花’ マロ」

ハワイ先住民 (カウアイ島・ニイハウ島)

「ナイオ naio」(Myoporum sandwicense ハマジンチョウ属) は、ハワイ諸島の自生種。きめの細かい堅固な木材は、アウトリガーカヌーの舷の厚板、家屋の柱、夜間の漁に使うたいまつなどさまざまな用途がある。白檀材に似た芳香があるが、その香りが長続きしないので「ニセビャクダン」とも呼ばれる。

このあやとりは、ナイオの幹と枝ぶりを立体的に表わしています。

O ka-naio, O ka-naio.
O ka lua a kane,
I haki a'e la i ka makini Hakalau.
Lewa lu nanai o kahi i kau ai o ka malo o pua-ula.

Oh, naio tree, Oh, naio tree.
Oh, the destruction by Kane
Shattered in the Hakalau wind,
Swinging, scattered, stripped, where hangs the red-flower malo.

おー ナイオよ おー ナイオよ
おー カーネ神による破壊
ハカラウの風に打ち砕かれた
揺らされて 散り散りにされ 裸にされた
‘赤い花’ マロを掛けるナイオが ♪

「‘赤い花’ マロ (ka malo o pua-ula)」とは、赤く染めたタパ布で作った腰布 (褌) で、首長クラスだけが身につけることができました。あやとりを取り続けると、枝に掛けられた「マロ」が現われます。

kahi i kau ai o ka malo o pua-ula.

‘赤い花’ マロを掛ける場所 ♪

出典 Dickey, L.A. (1928) "String Figures from Hawaii, Including Some from New Hebrides and Gilbert Islands" Bishop Museum, Bulletin 54.

「ナイオ naio」については、ハワイ・ビショップ博物館の《伝承民族植物学》のページへ。

Ys 2009/09/28

取り方: ナイオの木