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あやとりトピックス 171-180

今年も元気に「ゆびは魔法使い」~第10回善気山・遊びの寺子屋報告 2012/08/22

全国各地の最高気温表示が34、35℃は当たり前、「熱中症に気を付けて!」「水分補給!水分補給!」が合言葉になる今年の夏です。皆様はいかがお過ごしですか。

さて、京都・哲学の道を上がったところにある法然院では、今年も7月27日 (金)~30日 (月) の4日間、「善気山・遊びの寺子屋」が開催されました。今年で、6回目の参加となった「ゆびはまほうつかい!世界のあやとりであそぼ!いろんな発見ができるよ」は、毎日13時半~16時まで南書院の広い座敷の一角で行いました。

昨年、飾った手作りあやとりタペストリー世界版と日本版-Iに加え日本版-IIを作りました。内容は「山のトンネル」「あみ」「ほうき」「カメ」「さかずき」「トンネル」「4段ばしご→東京タワー」「ロケット発射」「馬の目 (ひとりあやとりの中から)」の9種類です。

例年のことながら、どんな出会いがあるかワクワクします。初めて出会った人同士、年齢など関係なく教え合い、取り合うことが出来る遊びなので、出会いの橋渡しが出来たらいいなと考えていました。そして、今年5月に野口先生の「あやとり講習会」で取り上げた「東京スカイツリー」に見立てたあやとりが紹介できたら良いなと胸に秘めて寺子屋初日を迎えました。

昨年の結び目がないあやとりひもを持って参加してくれた小学2年生のM子ちゃん。「さかずき→東京タワー」「かに→女の子」などのおさらいから始め、「東京タワー」を完成させると、「ぼくもそれ (東京タワー) 作りたい!」と小学1年生の男の子がリクエスト。早速、M子ちゃんに先生になってもらいました。お互いに言葉は少なめですが相手の指をしっかり見ながら形を比べては何度もくり返しながら習得していました。

3年前にも参加してくれたA子さんは小学5年生になってました。それから、弟さんの年中児のY君とお父さんも一緒でした。「3年前に教わったんですが…。忘れちゃいました」とお父さん。「いえいえ、あやとりひもを持つと、指が動き始めますから…」。早速、父娘で「4段ばしご→東京タワー」「かめ」のおさらい。「覚えているものですね~」と感心されてました。「カメはパプア・ニューギニアにもあるので比べてみてください」。A子ちゃんとお父さん、助け合って習得。「こちらの方がウミガメっぽいですね」。こんな中、弟のY君は年中児ながら、あやとりの本を読んで一人、黙々と「まつば」に挑戦。つぎに会った時には何が出来るのか楽しみになりました。

「今、話題の “東京スカイツリー” はいかがですか?」「実は “スカイツリー” というあやとりがあったわけではないんです。「アタヌアの家」というポリネシアのあやとりの形を、国際あやとり協会会員の川島さんがスカイツリーに見立てたものなんです」。「アタヌアの家」は取り方が5行程ほどなので分かりやすく、熱心にきれいに仕上げていました。4才ぐらいでも形良く立体的に出来上がるので魅力的なようです。挑戦した皆さんが満足そうでした。きっと家でも得意気に披露したのではないでしょうか。

遊びの寺子屋では色々な〈遊び〉が毎日、時間帯によって組まれています:土笛作り、お面作り、わらべ歌、お琴演奏、点茶、裁縫、料理などなど。南書院は遊び開始時刻までのちょっとした時間を絵本を読んだり、あやとり、風呂敷包み体験、囲碁、将棋などをしながら親子や友だちと過ごせる場所であり、観光で来られた方々も含めて、どなたでも気兼ねなく参加出来る場所でもあります。もちろん、〈遊び〉には参加せずに、南書院で午後の時間をゆったりと過ごすこともできます。

昨年は震災や原発のことがあったからでしょうか、海外の旅行者の参加は無かったのですが、今年は海外の方々も多く賑やかでした。その中で語学留学しているというフランスの男性がご両親を伴って南書院に上がってこられました。

早速ご夫婦でにこやかに「二人あやとり」を始められたのです。周りにいた人たちは「田んぼ」「かわ」と同じ取り方をする姿に「フランスと同じ!」とびっくり。お父さんが取り方が分からないようなので私が取って「鼓」の形になるとお母さんも考え込んでしまいました。ど忘れなさったのでしょうか…。

片言の日本語の息子さんが通訳をしてくれるので、「二人あやとり」の形に一つ一つの名前を伝えると、なるほど納得というような笑顔の返事でした。ちなみにフランスでは何という見立てなのか尋ねると特に名前は無いようでした。「二人あやとり」を「ひとりあやとり」でお見せするととても感心されていました。「ひとりあやとり」はしたことがないようでした。先人はあやとりの形一つ一つに見立てた名前を付けて「わたしんちのたんぼだよ!」「高い鉄橋さ!」などと会話も楽しみながら終わりのない「二人あやとり」をしている情景が目に浮かんできました。

今年は、「二人あやとり」が盛んでした。取り方を違えれば…「こんな形にもなるんだ!」「こんな形になっちゃった!失敗!」というように二人でちょっぴりドキドキしながら楽しめることが人気なのではないかと思います。たっぷり楽しんでほしいあやとりです。

あやとりはそれぞれにやりたいものが異なります。一人ではとうてい対応できません。そこで必要になるのがアシスタントです。「あやとりおじさん」です。では、自己紹介をお願いします。

★初めまして、あやとりユキジーです。写真にあるオジンです。あやとりマリコさんのみようみまねでやってます。毎年、この時期が近くなると、猛特訓で新作を仕込みます。今年の新作は人気の「スカイツリー」、特訓の甲斐あって、参加者に見せることができました。その他、「パンパンほうき」や「コーヒーカップ→エプロン→豆電球→ものさし」、「カニ→納豆→女の子」、「山の上のお月さん」に「はしご」等々を参加者と楽しむことができました。ちなみに、わたしの得意技は、野口あやとり会 (第1回5月) で習得した北極圏の「カモメ」です。 みなさん、楽しい時間を共にできて、ありがとう!来年も、また、遊びましょうぞ。★

今年もあやとりが出来たことを感謝いたします。そして、今年は節目の10年、皆さんの熱意と努力のたまものです。みなさん、ありがとう!これからも末永く「善気山・遊びの寺子屋」が続くことを願って止みません。

法然院の皆様、法然院・森のセンターの皆様、遊びの寺小屋に参加されてる講師の皆様、そして、今年も参加して下さった多くの皆さん、ありがとうございました。

青木萬里子@ISFA 2012/08/20

「あやとり・まりこ」その4 2012/03/28

《小学校編》



湘南学園小学校には、湘南学園幼稚園で幾つものあやとりに出合って巣立った子が何人も進学しています。幼稚園と小学校は同じ敷地内にあり、休み時間に鬼ごっこや鉄棒遊びをしている時に出会うと「まり子先生、あやとりひもある?」、「カメってどうやるんだった?」と声を掛けてくれます。あやとりが出来る環境があれば引き続き関心を持って楽しんでいくかもしれない。外部から入学した子の中にもあやとりに興味のある子がいるかもしれない。そうだ!今年は小学校の金曜日の昼休み時間に「あやとり・まりこ」をやらせてもらおうと考えました。

2011年度の5年生の国語教科書に『見立てる』という単元であやとりが取り上げられ、国際あやとり協会顧問の野口廣氏の文章が載りました。このことが良い切っ掛けになり、野口先生との出会いやあやとり会のこと、あやとりは世界中にあること、幼稚園ではみんなであやとりに取り組んでいることなどを、校長先生をはじめ何人もの先生方にお話しすることができました。そして、「いつでも来て、あやとりをやってください」というこころよい返事を頂き、早速6月24日から毎週金曜日の12時から13時の昼休み時間にあやとりをスタートしました。

1年生の廊下前で始めたあやとりは「幼稚園の時やったよね」、「6段ばしご忘れた!」、「やったことがないから教えて下さい」と色々な声が行き交って大盛況でした。昼休み、廊下で出会う上級生が「まり子先生だ、あやとり?」「金曜日に来てるのよ」こんな会話を通してあやとりをやっているという情報が少しずつ広まっていきました。

2学期からは、図書室でもあり、パソコン学習をしたり、折り紙遊びなども自由にできて、自然にみんながつどえる素敵な空間のメディアセンターであやとりを始めました。テーブルには毎回『たのしいあやとり初級編』『たのしいあやとり中級編』『大人のあやとり』の各本と、『世界あやとり紀行』の中からインドの「手」・エチオピアの「魚を捕る網」のカラー写真と毛糸のひも50本程を用意することにしました。集まってきた子には「あやとりは世界中にあるんだよ」と話しますが、中には写真を手にして「へぇ~、世界中でやってるんだ!」「知らなかった!お母さんにも教えてあげようっと!」とびっくりしています。

そして、あやとりひもを渡す時には例のことを必ず確認します。「あやとりの約束知ってる?①首にかけない。②授業中はやらない。③道を歩きながらやらない。守れるかな?」

メディアセンター担当の男の先生が「小学校の頃やったよ、はまってましたよ!」と言って指をスイスイ動かす姿に先生の意外な面を発見したのでしょう。「すごいじゃん、先生!」と大騒ぎでした。メディアセンターでの小学生の様子を毎日見ている担当の先生と話しをしていると、あやとりは素晴らしい遊びだから少しでも定着出来るような環境を作りたいと言う熱心な気持ちが伝わってきました。そこで、「あやとり・まりこ」がいなくてもあやとりに関心が持てる環境、目にすることで足を止めてやってみようと思える環境を作ることにしました。「きく」(日本)「はしご」(世界各地)「7つのダイヤ」(日本)「ネズミ・指ぬき」(世界各地)「かめ」(パプア・ニューギニア) など12,3種類程のあやとりの取り方を貼った段ボールで作った『世界のあやとりで遊ぼう!』パネルをセットし、また、いつでも誰でもあやとりひもを作ることが出来るように適当な長さに切った毛糸を用意しました。すると、パネルの前で友だちとあやとりをする姿が見られ、毛糸はアッと言う間になくなったとのことでした。校長先生の「教室でやる子どもが増えているんですよ」と言う言葉であやとり環境が浸透している様子がうかがわれます。

金曜日になると、友だちと連れだって必ず来る4年生5年生の女の子達は「菊の花がきれい…」「花かごがかわいい…」と言いながら教え合い、その姿がとても楽しそうでした。「ひとりあやとりのここまで出来るんだけど次はどうやるの?」と続きをマスターして帰る女の子。「7段ばしごから8段、9段と増やしていくのを教えて下さい」と指技に挑んでくる5、6年生の男の子達。下級生が上級生に教えてあげる姿も見られ心がポット暖かくなります。幼稚園の時にあやとりに夢中だった子の姿が何人も見られたのも嬉しい光景でした。

友人からは「小田急電車の中で男の子達があやとりをしてたわよ。始めはそれぞれであやとりをしてたけど、そのうちふたりあやとりを楽しそうにしてるの。いいわよね」のあやとり情報。ひもさえあればどこでもできるあやとりですから…素敵な遊びですよね。「次年度もあやとりよろしくお願いします」と嬉しい声がかかっています。

あやとりばんざぁ~い、4月からも頑張るぞ!

青木萬里子@ISFA 2012/03/25

「あやとり・まりこ」その3 2012/03/28

《幼稚園編》





「なんでずっと来なかったの?あやとりやりたかったのに!」「ひもちょうだい。2段ばしご覚えてるよ!見てて!」と幼稚園リーダーになった年長さんの暖かい言葉に迎えられ6月3日からスタートしました。今年も山吹色の毛糸をブレスレットにした子どもたちで賑わいますように!よろしくおねがいします。

*年少さん (3歳児) は、年中、年長さんたちの真似っこをして、あやとりひもを手首に巻くことから始まりますが、なかなか上手にはできません。からまったりはずれたりしているうちに要領を得てきて、ブレスレットのようになってきます。

10本の指と両手首までくねらせて「これチューリップ!」(植えた球根が芽を出したからかな?)、「これくもの巣みたい!」(指にもじゃもじゃに引っかかったからかな?)、「これなんだぁ~。線路でした、ガタァ~ン、ガタァ~ン」(電車が大好きらしい) と見せてくれます。3歳さんは〈見立てる〉名人なんです。ひとり一人違うから素晴らしい!

2学期も半ば過ぎると、「あやとりのひもをください!」と一人でやってきます。3歳さんサイズに切った毛糸を結びながら「あやとりのお約束は覚えているかな?」と尋ねると「うん、首に掛けちゃいけないの」「どうしてかな~?」「ウエッてなるから」。傍らであやとりをしていた年長さんが「危ないんだよ、息ができないと大変だよ!それに、集会中は (あやとりを) やっちゃ駄目だよ。お話聞くんだよ」と言葉添えをすると、知ってると言わんばかりに大きくうなづいています。

そして、「ぱんぱんほうき」ができたりすると、まるで大事件が起きたかのように担任のところに一目散に走ります。「上手だね!○○くん、すごい!」とたくさんのほめ言葉をもらって、うれしさいっぱいに飛び跳ねてます。このほめ言葉でまたあやとりをやりたくなるんですね。

*年中さんには、連続あやとりの「コーヒーカップ」から「東京タワー」ができると、「どんな形かな、鏡で見てごらん!」と声を掛けます。口にくわえて仕上がったすらっと伸びた形を見ると、誰もがにこっとします。可愛らしい光景です。

マジック風な「腕抜き」もお気に入りの一つです。友だちの腕を借りて最後にひもを引く時の得意そうな顔。「お見事!腕抜き名人!」 失敗した時のキョトンとした顔がまたまた可愛いんです。こんな場面では「教えてあげるよ!」とあやとりひもが友だち同士のつながりになります。あやとりって、素敵だなと思う場面です。

3学期には、「東京スカイツリー」に挑戦する子も現れたので、「手首に3回巻くんだよ。ポイントは巻き方。本当はポリネシアの小さな島のあやとりで昔話に出てくる海の中の家ができます。それを立てると東京スカイツリーに見える、と考えた日本の人がいたのでした」などと話しながら作っていると「スカイツリーって簡単、ほらっね!」の声。私が思っていたより簡単に、しかも形良く出来上がっているではありませんか。「すごぉ~い!スカイツリー名人!、友だちにも教えてあげてね」年長さんになったらよろしくね。

*年長さんには、3学期の「あやとり・まりこ」の学年集会で次のようなお話しをしました。「あやとりをする時には “指の名前、右・左、取り合う、つまむ、向こう側・こちら側” などいろんな言葉を使います。覚えておくと教えてあげる時も教わる時も分かりやすいから、みんなで覚えようね!」

「あやとりは世界中にあるんですよ」「へぇ~知らなかった!」、インドの「手」のカラー写真を見せると「ほうきと同じだ!」。「インドの人は手を使ってご飯も食べるから手は大事なんだね。だから手にしようと考えたのかもね。同じ形でも日本人はきれい好きで、よくお掃除をするからほうきにそっくり、と思ったのかもね」。エチオピアの「さかなを捕る網」を見せると、「それって2段ばしごでしょ?」と子どもたち。同じ形でも国によって名前が違うのには訳が有ることをお話しました。

「あやとりカード」には齋藤たま著の『あやとりいととり』の中から「はしご」「かめ」「カニ」「紙芝居」「ちょう」など13種類のあやとりが載っています。その中からいくつか披露すると「まり子先生の指ってすごい!はやぁ~い!」「何でもできるんだね」とたくさんほめてもらいました。

カードをもらった年長さんたちは、何に挑戦するかは自分で決め、ひとりで3回できるまで頑張ります。私の傍らで朝からずっと挑戦している子に「終わりにしても良いんだよ」と声を掛けてみると指を動かしながら首を横に振って「ううん!諦めないよ!」と頑張り通しました。自分で決めることって本当にすごい!子どもって本当に素晴らしい!といつもながら感心します。

保護者懇談会では、あやとりに取り組む話の後、お母さん方と「二人あやとり」「もちつき」などで大いに盛り上がったそうです。その時、「月にむらくも」「カニ」はどうやるんですか?という質問が出て、これらもみんなでやったそうです。そんな積極的なお母さんがいらっしゃる学年ですから、お母さんに教わった、お父さんに教わったと言う子が何人もいました。担当の先生たちは「お姉さん、お兄さんがいる子たちが習ってきて、いい雰囲気を作ってくれたんです。有り難かったです」、「2月の遠足で県立生命の星・地球博物館に行って、カニを見たら、カニに挑戦する子が増えて、あやとりカニでカニごっこをしてました。子どもって色んなことを思いつくものですね」と話してくれました。子どもたち、家族の皆さん、先生方が一緒になって素敵な環境を作っているのです。

今年は例年になくインフルエンザが猛威を振るい、どの学年も学級閉鎖、学年閉鎖を繰り返しました。熱心に取り組んでいたあやとりでしたが、久しぶりに登園した時には、卒業に向けた活動が待っていました。それでもちょっとした時間を見つけては「あみ」「山のトンネル」「ひとりあやとり」などに挑戦していました。卒業式の思い出の言葉でH君が「まり子先生とあやとりできたのが楽しかった!」と言っていたそうです。今年度は幼稚園で30回も子どもたちと「あやとり・まりこ」を楽しむことができました。ありがとうございました。

あやとりばんざぁ~い!(つづく)

青木萬里子@ISFA 2012/03/25

松井るり子さんの日記 2012/03/28

松井るり子さんの日記を先行公開いたします。

週刊DUDIKO できる子も、できない子も

母の幼稚園の三学期は、あやとりブームだった。雨の日はもちろんのこと、晴れでも園庭で、なかよしが二人で一緒にひなたぼっこしながら、あやとりをしている。田んぼに散歩に行っても、あぜ道に座り込んで、ポケットから紐を出して、あやとりが始まる。子どもにとっては、自分が好きなことを「どこでするか」もだいじなのかもしれない。「ここでもできる自分」をそのつど確かめることが。

以前何度か、おかあさん方向けのあやとり会をさせてもらった。私は「せっかく来てくださったのに、本で自習できるようなことに時間を使わせては申し訳ない」と考えて、なるべく難しいものをお教えしようとがんばった。その場ではいくらか喜ばれたと思うが、子どもたちには浸透しなかった。

その後保育者が、おかあさん方に向けて、初歩の初歩から複数回、あやとり会をしたところ、子どもたちにさっと広まったそうだ。

幼稚園一のあやとり名人は、野口廣著『大人のあやとり』(主婦の友社) の写真を見て、どんどんとってしまうそうだ。でも「耳の大きな犬」だけは解らないので教えてと、ちょうど帰省の折に言われた。もちろん、喜んでお教えした。

最初に作って見せた犬を「『おいで』って呼ぶと、『わんわんわんわん』ってこっちに来るよ」と、何も考えずに言ったら「鳴くの?」と聞かれた。

なるほど、できあがりのあやとりは普通、静止しているのに、このあやとりの犬は「動く」。だったら「鳴く」というのもありだと思ったようだ。可愛い。

私はゆっくりとっていると解らなくなってしまうので、「ちょっと待ってね」と頼んで、ほどいて最初からやり直す。そんな情けない教え方なのに、すぐ覚えてとってくれた。

まだ何もとれない小さな子も、みんなに混じって同じことがしたいようで、あやとり紐を両手にかけて、なにやらぐるぐると引っかけては、こちらに広げて見せて「にっこー」と、とても嬉しそうに笑いかけてくれるので、私も嬉しくなった。「できない=楽しくない」は大人だけで、幼子はたとえ自分にはできなくても、その場の雰囲気をにこにこと楽しめることを知り、感心した。

「耳の大きな犬」というのが正式な名前だが、みんな揃って「いぬのさんぽ」と呼びならわしていた。言われてみれば、それ以外ないような気がしてくる。

絵本の水先案内人、松井るり子さんのサイトはこちら。「るり子の日記」の検索文字に「あやとり」を入れてサーチすると他の日の記述も読むことができます。(日記の先行公開を快諾していただいた松井さんに感謝いたします)

「耳の大きな犬」の取り方はこちら

Ys

『女性自身』の「あやとり特集」 2012/02/21

『女性自身』3月6日号 (2月21日発売 2528号) に「あやとり特集」(カラー5ページ) が掲載されています。〈鈴木福くんも挑戦!「あやとり」やっぱり楽しいね〉

「東京スカイツリー」をうれしそうに見せているのは福くん。ほかにも「はしご~東京タワー」、「ほうき~竹やぶの一軒家」、「ちょうちょう」、「ハワイの魚」などの取り方を写真で紹介しています。

撮影の裏話は、青木さんからお聞き下さい。

森製紐の「あやとりひも

Ys

十二支のあやとり -11 2012/01/01

明けましておめでとうございます。

恒例の十二支あやとりのご紹介。今年はタツです。

古代中国で十二支それぞれに動物が当てはめられた時、「辰」だけが想像上の生き物である「竜/龍」となりました。中国のあやとりについてはデータが少なく、「竜」そのものに見立てたあやとりは見つかりません。今回は、「竜/龍」の関係するあやとりを2つ紹介します。

はじめは、オーストラリア大陸北東部ヨーク岬のアボリジニ少年から採集された「たつまき」(*1)。ロート状の雲の形が立体的に表された見事なあやとりです。このあやとりの現地での呼び名 (Mare) の意味や、この自然現象を何に見立てているかは不明です。ただ、英語名称は “Waterspout” と記されているので海上で発生する “たつまき” と思われます (“tornade” は陸上の “たつまき”)。本邦では古来から、このめったに見られない、恐ろしい自然現象を「龍の天上」として伝えてきたことは皆さんもよくご存知でしょう (たとえば、芥川龍之介の『竜』(1919) →「青空文庫」)。

西欧世界では物語に登場する「ドラゴン」と呼ばれる怪物がよく知られています。日本では、この「ドラゴン」を「竜」と訳したことから、古代中国の皇帝のシンボルでもあった「龍」、西洋の「ドラゴン」、さらに実在した巨大生物「恐竜」まで、「龍/竜」は混在したイメージで捉えられています。もう一つのあやとりはその「恐竜」です。

イギリスのISFA会員 Martin Probert さんの創作「Loch Ness Monster ロッホ・ネス・モンスター=ネス湖の怪獣」(*2)。イギリス、スコットランドのネス湖で目撃された (?) ネッシー (Nessie) です。実在するのか幻なのかいまだに判然としていません。洋の東西を問わず、「龍/竜/ドラゴン」はいつまでも不思議な存在であり続けています。

ISFA設立者の野口廣が主催する「あやとり会」も6年目を迎えました。初級、中級、上級の3クラスに分かれた講習会とあやとり検定を行っています。これまでの検定で「あやとり会指導員認定者」も13名となりました。興味のある方は、どうぞご参加下さい (イベント情報はこちら)。

今年も、あやとりについての情報提供など皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。

(*1) Haddon, K. (1918) "Some Australian string figures." Proceedings of the Royal Society of Victoria N.S. 30(2):121-36.
(*2) Martin Probert さんのサイトはこちら このサイトはすでに存在していません
TS & Ys

オーストラリア先住民アボリジニのあやとりの復活 2011/11/30

トピックス 058 の文末で以下のように述べました:「アボリジニの人々が、語りや唄を伴う真の伝承あやとりを〈外の世界〉へ発信することが期待されます」。最近になって、オーストラリア・ノーザンテリトリーのアボリジニ (@Yirrkala イルッカラ) の人々の間にあやとり復活の兆しが見えてきました。ここにその経緯を記しておきます。

2009年11月、シドニーのオーストラリア博物館でシンポジウム「The symposium Barks, Birds & Billabongs」が開催されました。このシンポジウムは、1948年に遂行されたノーザンテリトリー・アーネムランドのアボリジニ居住地域での学際的な調査研究 — "The 1948 American-Australian Scientific Expedition to Arnhem Land" — の成果を再評価する試みとして行われました。→ こちらリンク先は見つかりません

この調査研究プロジェクトのメンバーには、アメリカとオーストラリアの民族学・考古学・人類学・動物学・植物学の研究者が参加していましたが、その一人がオーストラリア博物館員の人類学者フレデリック・マッカーシー Frederick McCarthy。彼は、イルッカラのアボリジニの伝承あやとりに興味を示し、193種のあやとりの取り方を記録して、完成形を写真に撮り、実物も保存して持ち帰りました。そのデータは1960年に "The String Figures of Yirrkalla." として公刊されました。しかし、彼独特の取り方の記述では実際に作ることがほぼ不可能であり、この報告書はさほど注目を浴びることなく年月が過ぎました。その後、1995年、ISFA会員の Honor Maude と Mark Sherman がその難解な取り方記述をほぼすべて解読してISFA年会報で公表。その結果、マッカーシーの報告書はアボリジニあやとりに関する第一級の文献として蘇りました (トピックス 058 (*2))。

今回のシンポジウム関連出版物に、Robyn McKenzie 〔オーストラリア国立大学〕が、マッカーシーのあやとり調査についてたいへん興味深い論文を寄稿。調査旅行当時のマッカーシーの日記などの資料を駆使して、あやとり採集記録活動の実態を明らかにしています(*)。読者は、マッカーシーが伝承あやとりやあやとりに関わる情報 (タブー、儀式でのパフォーマンスなど) を誰からどのようにして収集したのかを知ることができます。

(*) Robyn McKenzie (2011) "The String Figures of Yirrkala: Examination of a legacy". In "Exploring the Legacy of the 1948 Arnhem Land Expedition" Edited by Martin Thomas and Margo Neale. Published by ANU E Press, The Australian National University.
この論文はネット上で公開されています → Robyn McKenzie の論文 (PDF)リンク先は見つかりません"Exploring the Legacy of the 1948 Arnhem Land Expedition" 全文 (PDF, ePub)

この論文には、「あやとりドリーミングの場所」と題する樹皮画の写真とその説明ノートも掲載されています。おそらくイルッカラのアボリジニに伝わる「あやとり発祥の地」が描かれているのでしょう。「ドリーミング」はアボリジニ文化の核心ともいえる概念・行為ですから、「あやとり」がアボリジニの人々にとって重要な営為として認められていたことが伺えます。

マッカーシーは、数人のアボリジニ男性から〈外の世界〉の人間には見せないような樹皮画を貰ったり、「あやとりの演じられる儀式」のことを聞き出しています。マッカーシーがアボリジニ女性から熱心にあやとり収集している姿を見て彼に親しみを感じたのかもしれません。しかし、彼自身は、貴重な資料を手に入れたにもかかわらず、それ以上に興味を持つこともなく、以後あやとりの調査研究を続けることはありませんでした。彼の報告書は取り方記述文の欠陥もあり、他の研究者に刺激を与えることもなく一度は忘れ去られたのです。〈アボリジニ文化に何の価値も認めない〉—そういう時代背景も影響していたのでしょう。あやとりの奥深い世界に興味を持つ者としては、ただただ惜しいことだと思います。

さて、そのシンポジウムの期間に、イルッカラ在住の二人のアボリジニ女性がオーストラリア博物館を訪れました。一人はあやとりを得意とする人、もう一人はアーティストの Naminapu Maymuru-White さん。この人のお母さんは、1948年のマッカーシーのあやとり採集に最も貢献した Ngarrawu Mununggurr さんなのです → こちらリンク先は見つかりません。マッカーシーは、189種のあやとりを即座に作る優れたテクニックや個々の形についての幅広い知識を高く評価して「Ngarrawu のあやとりはアートである」と述べています。Naminapu Maymuru-White さんは、この展示会で母親の残したあやとりの実物標本や文書記録が大切に保存されていたことに感動、博物館員らとの交流が始まります。

2010年、Robyn McKenzie と Stan Florek〔オーストラリア博物館〕がイルッカラを訪れ、このシンポジウム・展示会をきっかけにアボリジニの人々の間であやとり復活の兆しが見られたことを報告しています → こちら。現時点では儀式などとは無縁の「ただの遊び」に過ぎないようですが、今後の展開が注目されます。

なお、ISFA出版局では、以下の関連出版物を刊行しました: ~ Ken Edwards〔南クイーンズランド大学教授〕による、オーストラリア先住民とトレス海峡諸島民のあやとりに関する文献目録 (一部、解題を含む)。このタイトルをクリックするとPDF形式で全ページを閲覧、ダウンロードできます。

"String Figure Bibliography of Australian Aboriginal and Torres Strait Islander Peoples" (2011)

〔追記 2013/08/27

8月、イルッカラの女性によるあやとりの動画が公開されました。→ こちら

Ys

今年も元気に「ゆびは魔法使い」~第9回善気山・遊びの寺子屋報告 2011/08/19





今年も日本各地で猛暑の記録に迫る厳しい夏になりました。熱中症がニュースのトップで報じられ、水分補給の大切さがくり返されています。この猛暑に「節電」という言葉が輪をかけて一層、体感温度を上げています。皆様におかれては、いかがお過ごしでしょうか。

さて、今年も、京都は東山・善気山の麓、天然冷房で暑さ知らずの法然院にて、7月27日 (水)~7月30日 (土) の4日間にわたって「善気山遊びの寺子屋」が開催されました。「ゆびはまほうつかい!世界のあやとりであそぼ!いろんな発見ができるよ」は毎日1時半から4時まで南書院の広い座敷の一角で行われました。

「あやとり」での参加も今年で5回目となりますが、この時期が近づくと、「遊びの寺子屋」の実施が待ち遠しくて仕方ありません。あれこれ考えながら準備するのが実に楽しいのです。

  1. 南書院のあやとりコーナーの雰囲気をどのようにしようかしら?視覚にうったえるものはわかりやすいし効果も大きいから…そうだ、壁掛けと写真でいこう!
  2. のんびり、ゆったり楽しみながら、どんなことを伝えようかしら?あやとりは世界中にあることを知ってもらいたい…。指が覚えている…指が覚えることも伝えなくちゃ!そうだ、外国のあやとりの写真を使って「あやとり」は世界中に有ることを伝えよう…。それから、「見立て」のことを話題にしよう。
  3. どんな内容のガイドペーパーにしようかしら?そうだ、小学校5年生の国語教科書に載っている野口先生の文章 (「見立てる」) を使わせてもらおう。それに、被災地の方々にもあやとりでほっとする時間が出来たらいい…紐の取り方が分かるチラシも作って送ろう。今年はこれで行こう!

針仕事は得意ではないのですが、以下の「あやとり」を厚めの布に縫いつけ壁掛けにしました。日本のあやとりからは、「菊の花」、「ぱんぱんほうき」、「さかずきからの東京タワー」、「2段ばしご」、「山の上のお月さん」、「ほし」、「カニからの女の子」、「4段はしご」、「2本ぼうき」、「ひとりあやとりの中のたんぼ・あぶらあげ (東京)」;世界のあやとりからは、「バトカ峡谷」(ジンバブエ)、「カメ」(パプア・ニューギニア)、「テントの幕」(アメリカ先住民へカレーヤ・アパッチ) =「ナバホの敷物」(ナバホ)、「わな」(ペルー)、「たくさんの星」(アメリカ先住民ナバホ)、「白鳥」(カナダ)、「ハエ/カ」(ガイアナ)、「大きな魚/キントキダイ」(アメリカ・ハワイ) です。

さっそく、障子の前につるしたあやとり壁掛けを見た5才の男の子が指さして、「東京タワーやりたい!」と言ってくれました。口に紐をくわえてタワーの高さを強調します。どの子も得意げにお家の方に見せて、「すごいじゃない!どうやって作るの?」とほめられ、早速、ちびっ子あやとり先生になっていました。おまけは「タワー」から顔にかけて「お面」です。意外な面白さに思わず親子でにやり。子どもたちには人気のあやとりでした。

日本語が余りよく分からないという6年生の女の子は、途中までお母さんに教わったとの「ひとりあやとり」を習得しながら、ちらりと壁掛けを見て「テントの幕」がきれいだから、教えて…と意欲的。指がよく動く子ですばらしい出来ばえにご満悦。さすが6年生!4日間通ってきた2年生の女の子は、「山の上のお月さん」の指の動きと、「大きな魚」では小指にかける糸にとまどっていましたが、毎日、家で復習をして、次の日には「出来るようになったよ。見て!」と笑顔いっぱいで披露してくれました。

姉さんとお母さんと通ってきた5才の男の子は本を見ながら、一生懸命「カニ」に挑戦です。1年生のお姉さんも、「教えて…」と積極的。赤ちゃんをおんぶしたお母さんも子どもの時にやったあやとりを思い出しながら楽しそうに指を動かします。指が覚えているのですね。こちらの家族は、今年の夏休みは、みんなであやとり三昧かしら?来年も楽しみです。

高校生とお母さんがのんびりおしゃべりしながら二人あやとりを楽しむ姿や、双子の中学生とお母さんが留守番をしているおばあちゃんに「ひとりあやとり」を教えてあげようと、何度も復習していたのが印象的でした。

テーブルに広げられた外国人があやとりをしているカラー写真は思った通り、一役も二役もしてくれました。写真を見た子どもも大人も「外国にもあるんだ~知らなかった…」、「あやとりは日本だけの遊びじゃないんですね…初めて知った」、「国によって、名前が違うんですね」と驚いていました。日本でもおなじみの「あやとり」をやりながら、「2段はしご」はエチオピアでは「魚を捕る網」に、「ほうき」はインドでは「手」に、「さかずき」はペルーでは「腕抜き・わな」の遊びに見立てていること、国や地域によって、同じ形でも見立てが違うことを話すと、「なるほど!確かに、あやとりは見立てですね…」と感心されていました。

あやとりは生活の中から生まれ伝承されてきた、そして、今も伝承されているとても素晴らしい文化遺産です。これからも大いに楽しんで下さいね…。

今年は親子で「あそびの寺子屋」で楽しく過ごそう…という方々が多かったように感じました。同じ事を親子で体験できるのは、とても素敵なことではありませんか?食卓が親子の共通の話題で賑わったかもしれませんね。親が子どもの、子どもが親の意外な面を発見して、それぞれの株が上がったかもしれませんね。来年もまた、あやとりを愉しむ人の輪が大きく広がりますように。

今年も法然院のみなさん、法然院・森のセンターのみなさん、また、国際あやとり協会のみなさんのご協力と法然院の心地よい環境の中で、多くの方々とあやとりをすることができました。ありがとうございました。心から感謝申し上げます。

また、指導補助の青木幸久さん、ガイドペーパーのレイアウトをしてくれた青木菜穂さん、それから法然院・遊びの寺子屋デビューの青木真那ちゃん、ご苦労さま。

青木萬里子@ISFA 2011/08/15

「グーかすかべ」あやとり講座 2011/07/03

6月25日、春日部市立春日部第2児童センター「グーかすかべ」でのあやとり講習会の最終回が行われました。ここに約一年間の活動の様子を報告いたします。

2009年9月に新しくオープンした児童センター、その受付前のフロアーは木製の円いテーブルがいくつもセットされ、勉強したり、本を読んだり、トランプしたり、おしゃべりしたり、おやつを食べたり自由にできるフリースペースになっています。土曜日の午後には、小さい子から小学生、中学生、高校生、保護者の方々で賑わっていました。

このような居心地の良い空間を大切に考えていらっしゃる塩田館長さんは、現代の子どもの遊びから消えつつあるあやとりを、春日部の子どもたちに知って欲しいと考え、10回シリーズであやとり講座を開設されました。

『遊びながら賢くなれる!本格☆あやとり講座』
日程2010年8月~2011年6月の第4土曜日 (12月休講)
時間14時~15時
対象小学3年生~6年生
人数~30人
*原則10回参加*

児童センターのスタッフの方も2名参加され、始まりや終わりの挨拶では、講習を受けるマナーを指導され、またあやとりを楽しみながら補助役もしてくださいました。

8月の第1回目は、17人の小学生も私たち講師も初対面とあって少々緊張した雰囲気で始まりました。初めてあやとりをする子が数人いて、〈中指/人差指のかまえ〉を作るのに四苦八苦する様子が見られました。でも、「きゃっ!難しい!」という素直なことばがその場の雰囲気を和ませてくれました。お友達と誘い合って参加している小学生がほとんどだったので、教え合う姿が最初から見られ心強く思いました。

会を重ねていくと、始まる前のちょっとした時間には、二人あやとりをしたり、気に入ったあやとりを見せてくれたり、「どうやるんだったけ~?」と気軽に声をかけてくれるようになりました。「あやとり」が講師と生徒、大人と子供の隔たりを無くして、人と人を結びつけてくれることをこの場でも感じることができ、嬉しく思いました。

ナバホ取りや、複雑な指の動きをする外国のあやとりも自分のものにしていた6年生の女の子たちが3月に卒業し、4月からは1学年上がった男の子2人と女の子12人が、常連になりました。さすが小学生です。初級は比較的早くみんなが習得していました。中級は今までにない指の動きが加わり、たっぷり30分の時間が必要になりました。リズムに乗って取れることを指が覚えたらしめたもの、指の先に出来上がった形の素晴らしさにため息混じりの笑顔からは達成感が伝わってきました。特に「カモメ」は、忘れられないあやとりになったことと思います。


『あやとりテキスト』

各月のテキスト内容は以下のように日本、外国のあやとりの中から、初級、中級 (★) を組み合わせた内容です。

8月かに→女の子、ねずみ、バトカ峡谷、★テントの幕
9月ぱんぱんほうき、7つのダイヤ、★木にのぼる男
10月どろぼう、きく、★山の上のお月さん
11月ウインク、おうむ、★たくさんの星
1月もちつき、ふじさん、★うさぎ
2月ちょうちょ、めがね (蛾)、★ナバホの蝶
3月シベリアの家、はたおり、★花かご
4月さかずき→豆電球、カメ、★かもめ
5月ハンモック、★かもめ
6月★潮の満ち引き

『第1回「グーかすかべ」あやとり検定』(6月25日実施)

1月の第5回では、「6月の最終回に『あやとり検定』を受けることができます」と伝えると、「え~っ!あやとりに検定なんかあるんだ~?」と口々に。意外に思ったのでしょうね、こんな反応で盛り上がりました。

「5月までのテキストの中から、初級は3種類、中級は2種類を自分で選んでくださいね。ここにいる14人はみんな受けても大丈夫ですよ」。合格証を見せると、子ども達はますます刺激を受けたようでした。

4月の第8回が終わると、「わたし、かもめとテントの幕にする」、「私も中級にする」。中級も無理なく出来る子が迷った末に「私は、はたおりが好きだから、初級にする...」と決めていました。「大切な気持ちよ。素敵な形だなとか、取り方が好きっていう気持ちが、あやとりと仲良しになることだからね。頑張ってね」と励ましました。

6月25日、検定の受験者13人全員が見事合格しました。一人一人に合格証を手渡し、拍手でたたえ合いました。

最後まで嬉しいことがありました。講習会の途中で、ちょっと難しくなり、諦めそうにもなった女の子たちがきて、「もっとあやとりやりたかった!」、「あやとり楽しかった!」と感想を伝えてくれました。そして、「たくさんの星が上手に出来ないからもう一度教えてください」、「うさぎが難しかった!ここからどうやるんだっけ?」と寄ってきて、くり返し指を動かして、出来るようになり満足そうに帰っていきました。

これからも、児童センター「グーかすかべ」に、あやとりのひもを手にして遊ぶ子どもたちの姿が見られることでしょう。塩田館長さんをはじめ、スタッフのみなさん、ありがとうございました。

青木萬里子@ISFA 2011/07/02

「まつお文庫」でのあやとり会 2011/06/11

3月11日の大震災の被災者の方々のために、大阪の森製紐さんから500本のあやとり紐が、仙台の「まつお文庫」に送られました (→ トピックス 170 被災地への支援活動)。その紐と一緒に全国から集められた絵本や文房具等が、まつお文庫の主催者である松尾さんや文庫のお母さん達の手で各避難所に届けられています。避難所を廻るのも色々ご苦労がおありのようですが、「お孫さんに教えたい一心で熱心にあやとりにとりくむお年寄りの姿に反対に元気をもらいました」という話もお聞きしました。

私は5月28日に行われた被災者の追悼記念会に出席するため仙台に赴きました。その折りにまつお文庫にも伺い、皆さんとあやとりで楽しい時を過ごしました。当日集まられたのは、年中さんから小学生低学年5~6人とそのお母様方でした。一人で指導するにはちょうど良い人数です。

最初に、みなさんに「ひとりあやとり」の呼び名を教えてもらったところ大発見がありました。ある若いお母さんが、さいとうたまさんの本 (『あやとりいととり 3』福音館書店) を見ながら、6番の「あみ」と16番の「あみ」では紐の掛かり方が違うので別物だというのです。仙台では最初の「あみ」を「たんぼ」と呼び、2回目に出来る「あみ」を「あみ」と呼び分けている、という事でした。仙台出身の私も確かに子供の頃に「たんぼ」「川」「あみ」と言っていたのを思い出しました(*1)。また「馬の目」を「ダイヤ」と呼んでいました。

他の方から、「ぶんぶくちゃがま」の歌も静岡の方では、さいとうたまさんの本とは少し違って歌っているという話しも伺いました。「つづみ」を作って6人で1本づつ紐を引きながら歌い、歌い終わったところで手を離す。最後まで紐を持っていた人が負けのところは同じですが、歌の歌詞は次のようなものだそうです:「ぶんぶくちゃがまがお茶わかし、1杯飲んだらぬるかったあ。2杯飲んだら中どこだあ。3杯飲んだらあちちちちー」(*2)

3時半頃から私が国際あやとり協会について簡単に説明した後、次のような15種ほどの世界のあやとりを地域別に分けて紹介しました。

1.日本 (ふじさん、ちょうちょ)
2.世界各地 (ぱんぱんほうきねずみ)
3.ザンビア・ジンバブウェ (バトカ峡谷)
4.ザンビア (草ぶきの小屋)
5.パプア・ニューギニア (どろぼう)
6.オーストラリア (木にのぼる男)
7.バヌアツ (ライアの花)
8.アメリカ、アリゾナ州 (ナバホの蝶)
9.アルゼンチン (火山)
10.ロシア極北 (シベリアの家シベリアの家2階建て)
11.アメリカ、アラスカ州 (かもめ)
12.カナダ極北 (耳の大きな犬)

講習は、次のものをとりあげました。

1.ぱんぱんほうき
2.どろぼう
3.バトカ峡谷
4.草ぶきの小屋 (できあがりの形から、左手を上に、右手を下にするとパラシュートになりますよ、と説明したところ、パラシュートなら右手を離した方がパラシュートらしいのでは?という意見も出てみんなで右手を離したパラシュートを作って遊びました)
5.木にのぼる男

小学3年生のつぐみちゃんはどれも直ぐに覚えてしまい、そっと「ライアの花を教えて!」と私のところに寄って来たので、彼女だけに「ライアの花」を教えましたが、2回で覚えてしまいました。「これからは貴方が先生ね」と言ったら「うん」と嬉しそうに返事をしてくれました。

あやとり会はどこでやってもいつも楽しく、人と人とのコミュニケーション・ツールである事を今回も改めて実感しました。最後にみんなで記念写真をとっていただき、皆さんの笑顔に送られておいとましました。以上。

野口とも@ISFA

(*1) 2つに名前を呼び分けている例は《さいとうたま あやとりコレクション》にもたった一つしかありません (生姜板、裏の生姜板@京都)→「あみ
(*2) さいとうたまさんの本には、埼玉・小鹿野町で採集された唄が載っています。この静岡の唄とよく似た歌詞も、静岡・函南町で採集されています:
ぶんぶく茶釜 茶を沸かせ
一杯わいたら アッチッチ
二杯わいたら アッチッチ
出典:《さいとうたま あやとりコレクション
Ys